韓国、オランダ、日本。あの原爆を生き抜いた人たち、そして、生きることができなかった人たちの物語。

日本に原爆が投下されてから70年。あの惨禍を生き抜いた最後の世代の人たちが今、人生の最終章を迎えています。彼らはあの日、何を見たのか、原爆後の人生をどう生きたのか。日本人被爆者だけでなく、今まであまり語られることのなかった韓国人被爆者や、捕虜として被爆したオランダ人元兵士らとの対話を通して、戦争とは何か、人間とは何かに迫る長編ドキュメンタリー映画です。

 

ドキュメンタリー映画「美しいひと」

撮影・監督/東志津 

プロデューサー/野口香織 整音/永峯康弘 音楽/横内丙午

題字/赤松陽構造 

製作協力/ヒポ・コミュニケーションズ いせフィルム 

製作・配給/㈱一隅社 S.Aプロダクション

助成/文化芸術振興費補助金 

 

2013年 日本 116分 カラー 

 

 

〜監督の言葉〜

 「なぜ戦争をテーマに映画を撮るのですか?」という質問をよく投げかけられます。私は1975年生まれ。当然、戦争を知らない世代です。もう七十年も前に起こった出来事を、それを知らない世代が描くことに興味を持たれるのは当然のことかもしれません。

 幸いにも、日本はこの七十年近く、戦争を経験していません。ですから日本人である私が「あの戦争」を描くことは、「過去を振り返る」ことになります。しかし、日本が戦争をしていないこの七十年の間にも、世界では常に、戦争や紛争が行われてきました。私にとって戦争とは、「自分の国が過去に経験して、今はすでに過ぎ去ったもの」ではなく、未だ人間が克服できていない負の営みなのです。

 人間が人間らしく生まれ、自由で豊かな人生を送ることを脅かすもの、それが戦争です。長編第一作「花の夢—ある中国残留婦人—」で、戦後、中国の大地に置き去りにされ、何十年と祖国への帰国が叶わなかった日本人女性たちを描き、以来、戦争というテーマと格闘することが、私の創作の起爆となりました。

  

 今作「美しいひと」では、原爆という極めて日本的なテーマを通して、あえて日本人ではない人々も描きました。国や民族、人種、宗教、あるいは、個々の思想信条や左右のイデオロギーの違いなど、人間を分け隔てているあらゆる差異を超えて、どうすれば原爆の悲劇を、原爆後に生きる私たちが共有していけるだろうか、その思索の第一歩が本作です。

 原爆を生き抜いた人々と、生きることができなかった人々。彼らの命の尊厳を、静かに、穏やかに映画に焼き付けました。憎しみや憎悪に満ちあふれた今の時代だからこそ、多くの方々に観て頂きたいと思っています。                              東 志津